- HOME
- 爪甲横溝
爪甲横溝
爪甲横溝について
爪の変形はさまざまな原因で起こります。
爪白癬や細菌感染、あるいは爪の周りの炎症(爪囲炎)でもさまざまな爪の異常をきたします。
爪甲表面の横方向に起きる溝あるいは変形を来し、特徴的な臨床像を呈する疾患を紹介します。
●Beau lines
爪表面を横断するわずかな陥没(溝)です。
爪母に一時的に生じた障害に一致して起こります。
溝の幅が病変の期間を示します。
全ての爪甲に生じた場合は全身疾患(熱性疾患など)に起因した可能性を考えます。(図1)
特定の爪甲に生じた場合にはその爪周囲の湿疹や感染症に起因した可能性を考えます。

●Onychomadesis
爪甲脱落症です。
Beau linesより重症な状態です。
横向きの溝にそって爪が分かれ、連続していない爪ができます。(図2)
爪甲基部の爪母周囲に強い外傷が加わること、あるいは繰り返し外力が加わることで生じます。
爪の伸長に伴い末梢の爪が脱落します。

●Retronychia
「後爪郭部爪刺し」と呼ばれることがあります。
爪の後ろの皮膚(後爪郭)に爪が陥入している状態で、後爪郭部の発赤、腫脹、爪甲の黄白色肥厚、爪甲の横溝が主症状です。
後爪郭に持続的に外力が加わることがきっかけになります。
(図3 後爪郭の炎症が改善した状態です)

爪の成長
後爪郭深層に爪母があります。爪母から爪甲組織が形成され、爪が伸びます(図4 文献1より)。
爪母に何らかの損傷が起こると、生えてくる爪甲に異常が起きます。
Beau linesは爪母での爪甲新生の障害や、新生のスピード遅延、で起こります。
Onychomadesisも同様の機序で起こりますが、爪甲の新生が途絶するために爪が分かれてしまいます。
何らかのきっかけで爪甲の新生が途絶したために不連続の爪甲が生じ、その上繰り返される後爪郭の外傷等で何層もの爪甲が形成されるのがRetronychiaです。

治療
軽症のBeau linesであれば治療の必要はありません。
爪囲に炎症があればステロイド外用剤等で炎症を鎮静化させます。
日常生活では爪の周囲に外的刺激が加わらない様に配慮する必要があります。
靴による圧迫、長時間の歩行、ランニング、ダンスなど足の指に負担がかかる動作には注意すべきです。
重症のRetronychiaの場合、外用治療で効果がなければ爪甲を除去することもあります。
参考文献
1.Braswell MA, Daniel CR 3rd, Brodell RT. Beau lines, onychomadesis, and retronychia: A unifying hypothesis. J Am Acad Dermatol 2015; 73: 849-55
2.Ventura F, Correia O, Duarte AF, Barros AM et al. ”Retronychia – clinical and pathophysiological aspects”. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2016; 30:16-9